マークニズム宣言

偉くてすごくてたのしい

錆レビュー in ブヤ

 

上京にあたって地方の若者が必ず目を通す「究極の東京観光ガイド

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言うまでもなく『ろくでなしBLUES』である。

ここには東京のすべてが詰まっている。

盛岡市内の中学校では、修学旅行の行き先といえば東京と相場が決まっており、

出発前日は全生徒が必ず本作を音読させられる。これは常識である。

 

もちろん私も大学を卒業し東京の地を踏むにあたって改めて『ろくでなしBLUES』を熟読し、

各地名の正しい呼び名を完全にマスターした。

新宿は「ジュク」、六本木は「ポンギ」、吉祥寺は「ジョージ」。常識である。

 

さて、最近活動の拠点を渋谷ことブヤに移した私は、大好きな宮下公園の周辺で

かねてよりのライフワークを再開した。

錆の撮影である。

 

なんのことかというと、錆を撮るのである。

つまり、錆を写真に収めるのだ。

わかりやすく言うなら、錆を撮影する、といったところだ。

 

前の職場で“錆マエストロ”と呼ばれて恐れられた私は、何を隠そう大の錆好き。

今日はブヤで集めた錆および塗装剥げ等を厳選して評論していくぞ。

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▲塗装の大部分がボロボロと剥げていますが、小さな摩擦が長年積み重なったことで下地の金属も含めなめらかなツヤを帯びています。よく触られる手すりの特徴です。一部プライマー(下地塗料)も露出していますね。茶色と水色のコントラストがなかなか美しい。60点

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▲こちらも同じ色調ですが、手すりと違って触れられる機会が少ないため、紫外線や雨風でで白けたマットなテクスチャがそのままに。塗膜の“浮き”も目立ちます。さらに流れ出た錆による染み付き汚れ“ステイン”が不気味な雰囲気を醸していますね。70点

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▲こちらは塗り直したコンクリ壁から滲み出たステイン。あの辺りは鉄なんですね。きれいな白と鮮やかなオレンジの対比がgood。75点

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▲塗装が剥がれまくった壁にそのまま新しいインクを塗りつけているので味のある質感に仕上がっています。自衛隊の戦闘車両なんかも近くで見ると結構こんなかんじだったり。一箇所だけ下の落書きが覗いていてラコステのワニみたいな感じ出てます。70点

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▲ステインが長く伸びて縞模様を形成すると、ストリーキング (streaking)と呼ばれるようになります。なんだか外出したくなる響きですね。普通に汚いので20点

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▲絶妙なステインですね。鋳造部品のツヤとステッカーのヴィヴィッドなスカーレットもいいアクセントに。85点

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ブヤのカルチャーは錆とともにあり。真ん中の下敷きになっているステッカーは錆が染みついてボロボロ。その上に重ねたステッカーも、Aのあたりから錆が滲み出ています。錆とギャングの街、ブヤ。85点

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▲金属光沢をほのかに残した赤錆。傷んだ塗膜は塗りムラをさらけ出している……。その中で錆に強いステンレスが浮いています。手が写りこんでるのはご愛嬌。ビルの隙間に佇むイカした錆コンポジションとの出逢い、ブヤならではの錆体験です。85点

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ルーニー・テューンズのキャラクターがボロボロに朽ちていて、いい感じに渋くなっています。ロシア戦車が似合いそうな光景ですね。85点

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ブヤは落書きの街。書かれたら消さずに上塗りするのが渋谷区役所の流儀。結果、茶色の上に白があって?その上に赤があって?と複雑なことに。85点

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▲こちらは青銅特有の青サビ(verdigris)。青銅は錆びて初めて貫禄が出るのですが、たまに磨かれたばかりでピカピカのビルの消火栓を見るとキレイでドキドキしますよね。芳賀矢一先生だそうです。85点

芳賀矢一 - Wikipedia

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▲1ミリ以上ある分厚い塗装が剥がれて真っ赤に腐食しています。こういう錆、ぼくは嫌いです。鉄材がかわいそう。はやく塗りなおしてほしいです。10点

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▲錆、傷、元の塗装、擦り付けられた塗料など、どれがどれだか分からないほどいろいろなものに引っかかれています。これひとつでスケートの街、ブヤを体現しているかのようです。その歴史に90点

 

とまあいろいろ並べてみたわけだが、私が本当に好きなのは錆を眺めることではなく、それらのイメージをもとにサビサビのプラモデルを作ることなのだ。

特にAFV(装甲戦闘車両)モデルにおけるウェザリング表現・ダメージ表現は驚くほど奥が深く、プラモデルをまったく知らない人には想像もつかない世界がそこにはある。

参考までに、数々の表現手法を編み出した世界トップモデラーの一人、ミグ・ヒメネス氏のWebサイトを貼っておくのでぜひチェックしてみてほしい。これみんな1/35スケール。

MIG JIMENEZ

MIG JIMENEZ: Africa Korps DIANA ←特にすごい。

 

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私が前の会社で仕事中に塗ったドラム缶。

失敗作なのだが、社長に見つかったとき怒られるかと思ったらなぜか褒められた。

 

前の職場はプラモデル雑誌の編集部で、机で仕事とまったく関係のないプラモデルを作っていても

周りも「まあ、仕事に関係あるんだろうな」と思って注意してこないという最高の福利厚生があった。