現代のあらゆるアスリートの劇的な運動能力の進化に最も影響を与えた人物は誰か?
映画俳優の誰もが見事な肉体を手に入れることができたのは誰のおかげか?
街中のいたるところにフィットネスジムが建ち、人々が日々通い、鍛え、プロテインシェイクを飲み、フィットネスをライフスタイルの一部として当たり前のように取り入れるようになったのは誰の影響か?
答えはもちろん、アーノルド・シュワルツェネッガーである。
では、そのアーノルド・シュワルツェネッガーにもっとも影響を与えた人物は?
その答えを知らない人も、その名はコンビニで、薬局で、テレビCMで、車内広告で毎日のように目にしていたはずだ。
「 ウィダー」それは森永製菓が米国ウィダー社からライセンスを借りて国内展開している栄養補助食品のブランドである。
今年から森永の独自商品「inゼリー」シリーズからはウィダーブランドは姿を消してしまったが*1、櫻井翔さんの変な顔だけは相変わらず毎日どこかで見る羽目になってしまう。
日本に住んでいるかぎり嵐という奇形とっつぁん坊や集団の影から逃れることはできないのだ。
さて、その大元の「ウィダー」ブランドのファウンダーこそ、"現代ボディビル(およびその他現代的ライフスタイルすべて)の父"ジョー・ウィダーである。
彼がいなければ:
・ボディビルディングというスポーツは一部のオタクだけがやるものだった
・ウェイトトレーニングは体に悪いものとされたままだった
・アメリカ人の9割が肥満体型になっていた
・人々は今のような健康的な食生活を送れていなかった
・アーノルド・シュワルツェネッガーはオーストリアのローカル筋肉自慢のまま一生を終えていた
・ターミネーターもこの世に生まれなかった
・スーパーマンその他のスーパーヒーローたちの標準体型はクリストファー・リーヴ程度のままだった
・ハンヴィーがハマーになることはなかった
・ゴールドジムはベニスの1店舗だけで終わっていた
・100m走の記録はカール・ルイスで止まっていた
おもに上記のことが考えられる。恐ろしい終末世界である。
今現在私たちが昔と比べてずいぶんマシな暮らしを送ることができているのは、すべて彼のおかげと言っても差し支えない。そのくらい偉いのだ。
そんな偉い人の偉い伝記映画がアメリカで公開された。
その題を『Bigger』という。もっとデカく!
本作はジョーおよび弟のベンのウィダー兄弟の輝かしい軌跡を辿る感動的な実話である(たぶん)
ゴールデンエイジのレジェンドたちも登場し、アーノルドとセルジオ・オリバの伝説の対決も再現されるという。
アーノルド役は、アーノルドの再来とも呼ばれ、マッスルアンドフィットネス誌(これもまたジョー・ウィダーが創刊した世界一のフィットネス・トレーニング雑誌である。つくづく偉い)でもモデルとしておなじみのカラム・フォン・モガー(Calum Von Moger)氏。
そしてオリバ役はなんと本人の実の息子、セルジオ・オリバ・ジュニアだという。あまりにも感動的だ。ストレイトなんとかのアイスキューブじゃないか。
そんな本作は辛口映画評論サイト、ロッテン・トマト(ズ)において批評家採点で20%という驚異的な高評価を叩き出してしまっており、日本の映画配給会社に総スカンを食らう可能性が非常に高い。*2
私はマイケル・ベイの傑作ボディビル・クライム・サスペンス・コメディ『ペインアンドゲイン』をビデオスルーした無能たちのことを忘れていない。
俺たちに筋肉の映画を観させろ!
新宿の小規模劇場たちに期待しています。
追記:『暁に祈れ』と『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』の感想
『暁に祈れ』とはタイでタイ捕されて環境劣悪最悪刑務所でムエタイファイターとしてがんばるイギリス人青年の奮闘を描いた作品で、なんと実話原作らしい。
ボーダーライン2を観に行ったときに存在を知ってその日に見たのだが、とにかく刑務所が汚い。奴隷船レベルの半裸超密着川の字就寝シーンなんか見てらんない(劇場が暑くて狭苦しいせいで4DX気分だった)。この映画を観たら絶対にタイでは捕まりタイとは思えない。
内容は『あしたのジョー』的だなと思っていたらかなり『ベスト・キッド』的でもあり(ネタバレ:中盤に先生から教わったトリッキー技をラストに決めて逆転勝ちする)、超怖いタイ人たちが意外といい人だったりと、なかなかいい話であった。あとオンリー・ゴッドの署長が本作では所長として出てきて笑ってしまった。
前作はその年でいちばん面白かった衝撃の激ヤバ映画だが、今作に関しては正統なナンバリング続編というよりはコミカルなスピンオフとして観に行けば過度にがっかりせずに済むと思う。
いや、強いやつが暴れるからとにかく楽しいんだけど、とにかく一作目と同じものを期待してはいけない。
スーパーでわざわざ集団自爆するテロリスト、衛生カメラの解像度、遠距離から連続ヒットするRPG、ラストの衝撃のリクルート。緊張感ほぼゼロの、漫画みたいな映画だった(顔丸出し指突っ込み疑似フルオートについてはあえて言及するまでもない)
もし何か一本だけ映画を見に行こうと思っているなら、これじゃなくてボヘミアン・ラプソディをおすすめします。